福岡地方裁判所 昭和55年(わ)191号 判決 1980年6月23日
本籍
熊本県下益城郡中央町大字堅志田九一番地
住居
福岡県飯塚市大字横田二二番地の二二
会社役員
藤田司
昭和一三年一一月二〇日生
右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官幕田英雄出席のうえ、審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役一〇月及び罰金一〇〇〇万円に処する。
被告人が右の罰金を完納することのできないときは金五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
本裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、福岡県田川市弓削田一、三三八番地の三に主たる事務所を置いて臨床検査センターを経営していたものであるが、自己の所得税を免れようと企て
第一 昭和五一年分の実際所得金額が四〇、三九五、八九四円で、これに対する所得税額が一八、一九一、八〇〇円であるにもかかわらず、売上の一部を除外し、これによつて得た資金で日本長期信用銀行の割引債券を購入するなどの行為により、右所得金額のうち三一、一〇七、四六五円を秘匿した上、昭和五二年三月一五日、同県飯塚市新立岩一一番四五号所在の飯塚税務署において、同税務署長に対し、昭和五一年分の所得金額が九、二八八、四二九円で、これに対する所得税額が一、七六一、三〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により、同年分の所得税一六、四三〇、五〇〇円を免れ
第二 昭和五二年分の実際所得金額が四五、〇七九、八九八円で、これに対する所得税額が二一、一二八、六〇〇円であるにもかかわらず、前同様の行為により、右所得金額のうち二九、八七九、三三二円を秘匿した上、昭和五三年三月一四日、同税務署において、同税務署長に対し、昭和五二年分の所得金額が一五、二〇〇、五六六円で、これに対する所得税額が四、一九一、四〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により、同年分の所得税一六、九三七、二〇〇円を免れ
第三 昭和五三年分の実際所得金額が三三、七三二、六五五円で、これに対する所得税額が一三、九二八、八〇〇円であるにもかかわらず、前同様の行為により、右所得金額のうち二二、九六四、〇四一円を秘匿した上、昭和五四年三月一五日、同税務署において、同税務署長に対し、昭和五三年分の所得金額が一〇、七六八、六一四円で、これに対する所得税額が二、二八六、九〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により、同年分の所得税一一、六四一、九〇〇円を免れ
たものである。
(証拠の標目)
判示全事実につき
一 被告人の当公判廷における供述
一 被告人(三通)、藤田喜美子、渋谷邦子、米村文克、岡本敏郎、品川照夫、田中毅一郎、白木原士郎及び渋谷密夫の検察官に対する各供述調書
一 大蔵事務官作成の被告人(昭和五四年三月一九日付、九月一三日付、九月一八日付、九月一九日付、九月二一日付、一〇月一二日付)、藤田喜美子、渋谷邦子(四通)、米村文克、岡本敏郎、品川照美、田中毅一郎、白木原士郎(昭和五四年八月三一日付)、渋谷密夫、畑井庫太郎及び本田徹一郎に対する各質問てん末書
一 堀口貫岑(昭和五四年九月七日付、八月一〇日付)作成の上申書
一 戸伏仙之作成の査察官調査書(三通)
一 長野藤正、藤本郁夫、檜垣庸、高橋一敏(二通)、井上哲、佐久間昭三、上村耕介、榎本常人、藤本藤紀、岩本博秀、小野豊喜(二通)、岡松繁隆(三通)、川上良之助、池部真弘、松尾隆児、石橋博光、光武常博、川原英輔及び新江禎作成の各証明書
一 熊本地方貯金局長作成の回答書
一 検察官作成の捜査関係事項照会書
一 検察事務官作成の電話聴取書
一 堀口泰浩作成の「青色申告決算書と元帳残金との差額について」と題する書面
一 押収してある現金出納帳二綴(昭和五五年押第一二九号の二七、二八、以下押号を省略し、枝番号のみを記する。)、尿検査、寄生虫卵検査その他請求調書一綴(三〇)
判示第一の事実につき
一 田原宗夫、平山泰石及び黒瀬良英作成の「取引について」と題する各書面
一 大蔵事務官作成の被告人(昭和五四年一〇月二三日付)及び本田徹一郎に対する各質問てん末書
一 斉田勉作成の脱税額計算書及び脱税額計算書説明資料(いずれも昭和五一年分)
一 押収してある領収書一綴(一)、入金伝票一綴(一五)、現金出納帳一綴(一八)、買掛台帳一綴(二四)、決算書類一綴(三一)、所得税確定申告書(三二)、51年分所得税青色申告決算書(三五)
判示第二の事実につき
一 柴田陽一作成の上申書
一 堀口貫岑作成の「借上げアパートについて」と題する書面
一 大蔵事務官作成の赤池庄作に対する質問てん末書
一 斉田勉作成の脱税額計算書及び脱税額計算書説明資料(いずれも昭和五二年分)
一 押収してある領収書六綴(二ないし七)、現金出納帳一綴(一九)、元帳一綴(二二)、買掛台帳一綴(二五)、八代、熊本関係引継書類一綴(二六)、所得税確定申告書(三三)、52年分所得税青色申告決算書(三六)、同控(三八)
判示第三の事実につき
一 大蔵事務官作成の奥永英彦、矢野直夫、白木原士郎及び天田昭に対する各質問てん末書
一 矢野直夫及び天田昭の検察官に対する各供述調書
一 斉田勉作成の脱税額計算書及び脱税額計算書説明資料(いずれも昭和五三年分)
一 押収してある領収書四綴(八ないし一一)、会計伝票三綴(一二ないし一四)、入金伝票一綴(一七)、現金出納帳一綴(二〇)、元帳一綴(二三)、所得税確定申告書(三四)、53年分所得税青色申告決算書(三七)
判示第一及び第二の事実につき
一 押収してある大牟田センター入金伝票一綴(一六)、元帳一綴(二一)、現金出納帳一綴(二九)、売掛帳一綴(三九)、現金出納帳一綴(四〇)、売掛帳五綴(四一ないし四五)
判示第二及び第三の事実につき
一 奈木野虎勝及び堀口貫岑(昭和五四年九月二一日付)作成の各上申書
一 大蔵事務官作成の中西正和、田中忠昭(二通)及び手嶋秀人(二通)に対する各質問てん末書
一 田中忠昭及び手嶋秀人の検察官に対する各供述調書
一 島田昭一郎作成の査察官調査書
(法令の適用)
一 判示各所為 所得税法二三八条一項(罰金刑併科)
一 併合罪 刑法四五条前段、四七条本文、一〇条、四八条一項、二項(懲役刑につき最も重い判示第二の罪の刑に加重、罰金刑につき所定の罰金額を合算)
一 労役場留置 刑法一八条
一 執行猶予 刑法二五条一項(懲役刑)
よつて、主文のとおり判決する。
昭和五五年七月四日
(裁判官 原田國男)